親の介護、お金がない…そんな時は?【中編】
今回は前週に引き続き、親の介護、お金がない場合についてお話していきます。
お金がない場合の親の介護費用の捻出方法は、主に6つの方法が挙げられます。
それぞれの方法について解説します。
お金がない親の介護費用はどう捻出する?対処法6つ
<1>地域包括支援センターやケアマネージャーに相談する
地域包括支援センターは市区町村が設置している機関で、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員などの専門家を配置して、
地域住民の介護を包括的に支援しています。
相談窓口としての役割が大きく、個々の事例に応じてどんな支援制度を利用したら良いのかを提示してくれます。
介護支援専門員とも呼ばれるケアマネージャーも、1つの相談先として選択肢に入れてみてください。
ケアマネージャーは、地域包括支援センターに勤務していることもあれば、介護施設や介護関係の民間企業に勤務していることもあります。
専門的な知識をもとに、最適な選択肢を提示してくれるので、安心して相談してみると良いでしょう。
<2>公的な負担軽減制度や融資を活用する
公的な負担軽減制度や融資を活用することもできます。
主に、公的な負担軽減制度や融資として、8つの制度がありますので、参考にしてみてください。
①高額介護サービス費
高額介護サービス費とは、1カ月の間に支払った介護費用の合計が「負担限度額」をオーバーした際に、オーバーした分の費用が払い戻される制度です。
所得に応じて負担限度額が異なり、令和3年8月からは以下のとおりに設定されています。
区分 | 負担の上限額(月額) |
---|---|
課税所得690万円(年収約1,160万円)以上 | 140,100円(世帯) | 課税所得380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1,160万円) | 93,000円(世帯) | 課税所得380万円(年収約770万円)未満 | 44,000円(世帯) | 世帯の全員が市町村民税非課税 | 24,600円(世帯) | 世帯の全員が市町村民税非課税で、前年の公的年金等収入金額+その他の合計所得金額の合計が80万円以下の方など | 24,600円(世帯)、15,000円(個人) | 生活保護を受給している方など | 15,000円(世帯) |
②高額医療・高額介護合算療養費制度
高額医療・高額介護合算療養費制度とは、毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間で、
医療保険と介護保険における自己負担が高額になる場合に、自己負担が軽減される仕組みのことです。
限度額は、医療保険の制度や収入などによって細かく設定されています。
区分 | 75歳以上 | 70~74歳 | 70歳未満 |
---|---|---|---|
課税所得690万円(年収約1,160万円)以上 | 212万円 | 212万円 | 212万円 | 課税所得380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1,160万円)未満 | 141万円 | 141万円 | 141万円 | 課税所得145万円(年収約370万円)~課税所得380万円(年収約770万円)未満 | 67万円 | 67万円 | 67万円 | 課税所得145万円(年収約370万円)未満 | 56万円 | 56万円 | 60万円 | 世帯の全員が市町村民税非課税 | 31万円 | 31万円 | 34万円 | 世帯の全員が市町村民税非課税で合計所得金額の合計が80万円以下の方 | 19万円 | 19万円 | 34万円 |
③特定入所者介護サービス費
特定入所者介護サービス費は、介護施設などに入所した方の所得や資産が一定以下の場合、食費や居住費を軽減できる制度です
特定入所者介護サービス費でも、自己負担限度額が設定されているため、限度額をオーバーした部分の費用は支払う必要がありません。
そのため、特定入所者介護サービス費を利用すれば、経済的に不安を抱えている方でも、安心して介護施設を利用できます。
④自治体の介護サービス費用助成制度
自治体の介護サービス費用助成制度を利用することもできます。
例えば、東京都では介護保険サービスを利用する低所得者に向けて「生計困難者等に対する利用者負担額軽減事業」を実施しています。
「生計困難者等に対する利用者負担額軽減事業」では、
介護サービスに必要な費用の利用者負担額や食費・居住費負担額などの一部を助成しています。
他にも、住んでいる地域の自治体で介護サービス費用を助成する取り組みが行われていることもあるので、
詳しくは自治体の窓口に問い合わせてみてください。
⑤社会福祉法人等による利用者負担軽減制度
社会福祉法人等による利用者負担軽減制度を利用すると、介護費用の負担を減らせます。
制度の適用により、介護施設での食費・居住費の自己負担額を1/2〜1/4に抑えることが可能です。
ただし、制度の利用にあたっては、指定の要件を満たす必要があり、一定以上の収入がある方は制度を利用できません。
要件の詳細が気になる方は、各自治体の公式HPを参考にするか、窓口に直接問い合わせてみましょう。
⑥生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付制度は、低所得世帯や障害者世帯、
高齢者世帯に対して、経済的自立や在宅福祉の利用促進などを目的として、
資金の貸し付けや相談支援を行う制度です。
生活福祉資金には、総合支援資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金の4種類があり、
そのうち介護には福祉資金が利用できます。
福祉資金は以下の2種類に分けられ、目的に応じて資金の貸し付けをしてもらうことになります。
⑦福祉費
生活に必要な経費や病気療養、住宅の増改築・補修、福祉用具などの購入、介護サービス・障害者サービスの利用に必要な経費など
⑧緊急小口資金
緊急・一時的に政経を維持することが難しくなった場合に貸し付ける少額の費用
所得税・住民税の控除を適用
介護サービスにかかる費用の多くは、医療費控除を受けられるため、所得税・住民税の控除が適用されます。
訪問看護や訪問リハビリテーション、医療機関でのデイサービス、ショートステイなどは医療費控除の対象です。
なお、医療費控除を受けるためには確定申告をする必要があります。
確定申告が面倒に感じるかもしれませんが、税金の支払いを安くでき、
出費を抑えられるため、介護費用が足りないとお考えの方はぜひ利用してみてください。
<3>自宅を活用して資金を作る
介護資金が不足している方は、自宅を活用した資金の捻出を検討してみましょう。
自宅の売却は、最もスタンダードな現金化方法です。
しかし、売却せずとも、自宅を活用し資金を作る方法はあります。
自宅に住み続けたい方は、売却以外の方法がおすすめです。
<4>リースバック
リースバックは不動産を売却し、売却した不動産の借主になる方法です。
自宅に住み続けられさえすれば、自宅を売却しても構わないという方におすすめです。
単なる売却だと自宅とは別の住まいを確保する必要があります。
しかし、リースバックの場合、不動産の所有権を失う代わりに
借主たる地位をあらたに獲得するため、売却代金を手にしつつ自宅での生活を継続できます。
<5>リバースモーゲージ
リバースモーゲージは自宅を担保にしたお金の借り入れです。
借りたお金は、契約者の死亡後に自宅の売却金で返済する流れになります。
通常の不動産担保ローンと異なり、契約者の存命中は、利息の支払いのみで足ります。
毎月の返済の負担を軽くしつつ、お金を借りられる点が、リバースモーゲージのメリットです。
リバースモーゲージの利用により、毎月の返済に悩まされることなく、介護資金の確保が可能になります。
<6>マイホーム借り上げ制度
マイホーム借り上げ制度を利用すると、賃料収入を得る形で介護資金を確保できます。
マイホーム借り上げ制度は空き家を借り上げて、賃料収入が支払われるシステムで、
一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)によって運営されています。
マイホーム借り上げ制度の特徴は、借り上げた自宅が空室状態であっても、賃料が支払われる点です。
住む予定のない自宅がある方は、マイホーム借り上げ制度を検討しましょう。
公的な施設を選択する
施設選びにあたっては、公的な施設を選ぶと費用が安くなります。
公的施設は複数あり、代表例は次のとおりです。
特別養護老人ホーム(特養)
介護老人保健施設(老健)
介護医療院(介護療養型医療施設)
上記の施設は、入居一時金が無料または低額で、低所得者の方でも利用しやすいのが特徴です。
施設ごとに入所条件は異なっているため、利用の際は確認が必要です。
公的施設は、安価であるゆえ人気があり、待ち状態となっている場合もあります。
申請してすぐに入所できるとは限らないため、早めに行動しましょう。
特に特別養護老人ホーム(特養)は、利用負担軽減制度があり人気です。
利用負担軽減制度は、所得に応じた負担軽減を認める制度で、低所得者の方ほど安価に利用できる仕組みになっています。
公的な施設を選択することも、介護費用が捻出できないときの対処方法の1つです。
一般的には、民間の介護施設よりも公的な介護施設のほうが料金を安く抑えられます。
しかし、費用を安く抑えられる施設は満室になりやすいため、すぐに転居できない可能性もあります。
さらに、転居した際には入居一時金を再び支払わなければいけない場合もあり、一時的には多くの費用がかかる可能性があるため、注意してください。